2019年3月28日木曜日


子どもが一瞬であなたの前から消えるワケ(再掲)

読売オンライン 2018.3/25() 7:02配信 より引用(再掲)

 

買い物中などに、さっきまでそばにいたわが子の姿を見失ってしまう。そんな経験のある人は多いだろう。たいていはすぐに見つかるのだが、不幸にして、目を離したほんのわずかな時間に子どもが不慮の事故に巻き込まれてしまうケースは後を絶たない。子どもには大人とは違う特有の行動心理があり、見ている風景も大人とは異なるためだという。子どもの行動に詳しい松蔭大の深谷野亜准教授に、危険を回避し、事故を防ぐ方法について解説してもらった。

◆ちょっと目を離したすきに…

 厚生労働省の「人口動態統計」(2014年)によれば、全年齢層の死因では「不慮の事故」5位までに入っていません。しかし、子どもに限って見ると、14歳」「59歳」で共に2位、「1014歳」では3位と高くなっています。「事故」の内容は交通事故や溺死などです。「ちょっと目を離したすきに……」「危ないとは思っていたのに……」など、「まさか」と思うことが結果的に大きな事故につながってしまいます。

 昨年12月に、福井県越前市に住む3歳の男の子が行方不明になり、今年1月に遺体で発見されたケースがありました。報道によると、父親が男の子を車に乗せて遊びに行く途中、用事があったため、男の子を助手席に一人残して車を下り、職場に立ち寄りました。そして約10分後に戻ったところ、男の子がいなくなっていました。

 父親はスマートフォンを男の子に渡してアニメを見せていたので、「1人でも大丈夫だと思った」と取材に答えています。 車の近くには幅約5メートルの川が流れ、雨で増水していました。小柄な3歳の男の子が車のドアを内側から開けて外に出て、冬の川に入るはずがないと考え、誘拐事件ではないかと考えた人もいたそうです。しかし、その川の約40キロ下流で男の子の遺体が見つかったのです。警察では状況から、男の子が誤って川に転落して流されたもので、事件性はないとしています。
 なぜ男の子はわずかな時間に危険な川に向かってしまったのでしょうか。子どもの行動心理の特徴から推測してみます。

 

◆急成長期は「初めて出来た」の連続

 児童学の世界では、子どもの発達を次のようにとらえています。0歳児の頃は自分では何もできなかったのに、1歳になれば簡単な言葉の指示がわかり、2歳で自己主張を始めます。
 3歳くらいになると、それまで自分の身の周りのことしか目に入らなかったのが、その外に大きな世界があることに気がつくようになります。
 今まで自分に直接関係がなかったので気にもしなかった物の名前や使い道など、様々なことが知りたくて仕方がなくなります。いわゆる、魔の“なぜなぜ期”の始まりです。
 大人は自分の子どもが出来る範囲を「直前までの状況」から判断し、「昨日までできなかったことは今日も出来るはずがない」と考えてしまいがちです。しかし、急成長期の子どもの場合、「初めて出来る日」は突然、訪れます。多くの「子どもの初めて」は、何のトラブルもなく終わりますが、偶然が重なって、悲しい事故につながってしまうことがあるのです。
 福井のケースと同様に、車の中に短時間、幼い子どもを置いたままにしてしまった経験がある人は少なくないと思います。この時、「うちの子は内側からドアを開けられないから大丈夫だ」と考えていると、そのわずかな間に、子どもが内側からドアを開けられるようになる「初めて」が訪れるかもしれないので注意が必要です。



◆「死」を知らない子ども

 もう一つ、子どもが“危険”に接近してしまう理由に、10歳くらいまでの子どもは「死」の意味を完全に理解できていないという発達の特徴があります。アメリカの精神科医、キューブラー・ロスの研究以降、死についての研究が進んでおり、児童学でも子どもにとっての死の受容について、様々な研究が進められています。

 大人が行動する場合、死は取り返しのつかない永遠の別れと知っているので、死を避けるように行動をコントロールします。例えば、海で沖に向けて泳ぐ時、「これ以上沖に行けば帰るまでの体力はないだろうし、最悪、死んでしまうかもしれない」と予測できるからこそ、適当なところで引き返します。大人は、やる気を危機管理の観点で抑制しているとも言えますが、もし危機管理の観点が欠落していたらどういう結果になるでしょうか?
 子どもは2歳頃から、「死ぬ」という言葉を使いはじめますが、睡眠のような活動の一時的停止としてとらえています。
 6歳頃になれば、「死んだら二度と生き返らない」という仕組みを理解し始めますが、「自分も含め、全ての者は死ぬ」といったように、死を自分にも及ぶ危機として理解するのは10歳頃と考えられています。そのため、好奇心が活発に働き始めた3歳以降の子どもたちは、自分の好奇心の赴くまま、やる気を抑制できず、恐れることなく何にでもチャレンジしてしまうのです。

6000人が見落とした子どもの視点

 こうした危険を予測するには、子どもの視点で考えることが必要です。ただ、大人が子どもの視点を容易に想像できる、と考えるのは危険です。



 199412月、沖縄県名護市で7歳の男の子と5歳と4歳の女の子の計3人が行方不明となり、20日後に駐車したトラックの荷台にあったふた付きの箱型のタンク(縦横1メートル、高さ90センチ)の中で遺体となって発見されたケースが、それを示しています。
 子どもたちが見つかったタンクを載せた車の周辺は、以前から遊び場所の一つでした。捜索は延べ6000人を動員して行われ、車の周辺も調べましたが、タンクに入ったことを想像した人は1人もなく、捜索の対象外でした。子どもたちを発見したのは、たまたまこのタンクを使おうとした一般の人でした。

◆子ども視点で危険を予測 視野は大人の6割程度

 では、子どもの視点や目線で危険を予測するにはどうしたらよいでしょうか。
 まずは、文字通り目線を合わせることです。目の高さの違いだけでも、見える世界が大きく変わります。平均身長の違いから、大人の場合は160センチ、子どもは100センチくらいの高さから見ているのですが、見通せる範囲が大幅に変わってしまいます。大人が地面や床に膝をついて見える範囲が、おおよそ子どもの目線の目安になります。
 さらに大人と子どもでは、視力や視野も異なります。子どもの視力は3歳くらいになればおおよそ08くらいであり、6歳頃になってようやく10程度になります。また視力と同じように、視野も発達します。6歳頃は、大人と比べて縦横6割程度の視野しかないというスウェーデンの児童心理学者、サンデルス氏の研究もあります。

子どもの目線で見ないと、目に入らないものや気がつかないものがあるのです。こうした大人の気がつかないものに興味を引かれ、導かれるように動くことで、子どもが“一瞬で消える”可能性があるのです。

◆常に子どもの視点で考えろ

 私たち大人が予測しにくい子どもの行動について、子どもの発達や目線の特徴から説明をしましたが、事故を防いだり、姿を消した子どもをすぐに探したりするには、どのような方法が有効なのでしょうか?
 一言で言えば、「常に子どもの視点で考えろ」ということです。事故を防ぐ究極の対策は「子どもから一瞬でも目を離すな」ということになりますが、忙しい子育ての際にこれを実現するのは不可能でしょう。
 子どもは、「その家の子ども」というばかりではなく、社会全体にとっても「宝」です。子どもが安全に暮らしていけるように手をさしのべるのが、地域社会を作る大人の義務でもあると思います。周囲が育児を支援し、「親が安心して目を離せるゆとり」を作ってあげることも、大切な子育ての支援の一つなのです。

まちcomiメールの設定変更をいたします
 本校では一斉メールを保護者の皆さまに設定していただき、必要な情報をメール配信しています。平成31年度をむかえるにあたり、一斉メールの設定変更を行います。変更は以下のとおりです。
●平成30年度6年生(卒業生)は、登録を削除いたします。4月から、宮久保小学校からの配信はなくなります。
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新1年生につきましては、各自で登録してください。登録のしかたにつきましては、入学後に「登録のしかた」についてプリントをお配りいたします。